ほのぼの

昨日のつづきではありません(笑)


肉体労働現場には、聖蹟桜ヶ丘からバスで10分ちょっと。

いつも途中からバスに乗ってくる親子がいます。
ピカピカの小学1年生とそのお母さんです。

バスには、女の子が通う小学校の校長先生も乗っています。

お母さんは、校長先生に娘の名を伝えて挨拶し、とても爽やかでハキハキしているのですが、女の子は小さな背丈に似合わぬだみ声で無愛想です。

密かに、かわいくないコだなあ・・・と思ってました。

女の子の家から小学校までは徒歩で20分だそうです。
お母さんは、娘と一緒にバスに乗って小学校まで行った後、歩いて家まで帰るそうです。(わたしは何でも聞いている)

だみ声少女に向かって、20分くらい歩けよ・・・! と言ってやりたくなりましたが、まだ小1だし、車もたくさん通る道だし、まあ、しょうがないか、、、という気もしました。きっとこの母もそう思っていたのではないでしょうか。


今朝もこの親子がバス停で待っていました。
でも、今日はお母さんはバスに乗りません。

女の子は、いやだいやだいやだいやだ、とだみ声で連呼していましたが、お母さんにひょいと持ち上げられて無理やりバスに乗せられてしまいました。

ぷしゅーっとドアが閉まったとたんに、女の子はしゅん、と直角に下を向きました。
にんげんの首があんなにきっぱりと四角く曲がることに少し驚きました。

女の子がじっと床を見つめているので、校長先生が「そこの席が空いてるからお座りよ、」と声をかけましたが、だみ声少女は首を振るだけです。
「じゃあ、先生の隣に座るかい?」と言われても、黙って首をぶるんと振って棒のように立っていました。

バスが終着駅に着くと、女の子は運転手さんにだみ声でぼそっと、「ありがとうございました」と言ってバスを降りました。

おおお、意外と礼儀正しいのねえ、と感心していると、前にいた女の子が突然右手をぴっと空に向けて上げています。

なに? なに? なにしてるの???
ああ、、、横断歩道を渡るときの、あれか。

バスはロータリーの真ん中に止まったので、歩道までは3メートルほどあります。
横断歩道の白線はどこにもありませんが、万が一にもバスが動き出して轢かれることだってあるかもしれません。

きっとお家でお母さんに、通りを渡るときは手を上げましょう、と教えられたのですね。

歩道までのわずかな距離を、女の子は律儀にぴっと手を上げ続けながらてくてくと歩いています。

バスを降りた人たちがそれぞれの目的地に向かって散っていく中で、手を上げて歩いていたのは、だみ声の女の子ひとりだけでした。

校長先生が後ろから、「えらい、えらい、ちゃんとできるじゃないか」と女の子を褒めると、

「でも緊張する・・・」

だみ声を背中で聞きながら、わたしも自分の目指す方角へ歩いていきました。