神さま2013

品川駅から会社に向かう途中、ふと顔を上げたら、右手にある建物の門の脇に「食肉市場」と書かれた看板が見えました。

何度もそこを通っていたのに、今日はじめて気づきました。

会社からの帰り道。
横断歩道で信号が青になるのを待っていたら、目の前を大きなトラックがゆったりと通り過ぎ、信号のところで止まりました。荷台には、黒い牛がずらりと並んでいました。こちらに顔を向けています。続けてもう一台、同じ形のトラックがやってきて、またずらりと並んだ牛の顔が見えました。
やがてトラックは、交差点を右に曲がって「食肉市場」に向かっていきました。

あの牛は、あそこで殺されるのだなあ、とぼんやり思いながら、駅に向かいました。



先月、水槽の底に魚の死骸が沈んでいました。お腹のあたりがぶわあっと膨れ上がっているように見えました。割り箸でつまみ出したら、膨れていたのではなく、お腹がびりびりに引き裂かれてぱっくりと開いていたのだとわかりました。内臓が、きれいに無くなっていました。ぎざぎざの裂け目に反して、お腹の内側は驚くほどつるんとして滑らかでした。おそらく、エビが内臓を食べたのでしょう。

ふだん、エビが魚を食べることはありません。魚のフンは食べるらしいですが。

魚を飼い始めてすぐに半分以上の稚魚が死に、強いものだけが生き残って大人になりました。大きくなった魚が死んだのは初めてです。

ああいう死骸を見るのは決して気持ちのいいものではありません。
エビに腹が立つか? 立ちません。
エビは、ただ一生懸命生きているだけですから。

エビと魚は別の水槽で飼うべきか? 同じでよいと思います。


うちの横には川が流れています。魚が泳いでいます。
白鷺や鵜が、川で魚を捕って食べています。



品川駅に向かうエスカレーターに乗りながら、ふと思いました。

世の中のすべての生きものが、生きていくのに必要な一生分のエネルギーを備えて生まれてきたら、「食べる」という行為が不要になるのになあ、と。

自分を生かすために、他の命を奪わねばならないって、すごい過酷なシステムです。

それどころか、「食べる」という快楽を貪っているのだから、始末に負えない。


ありがとう、ごめんなさい、許してください、愛しています。
と、唱えてみたくなりました。